地球環境に配慮した建築の需要が高まる中、サステナブルに変わる新たな環境思想としてリジェネラティブという言葉が注目されています。
この記事では、リジェネラティブデザインの国内外の事例を紹介しています!
サステナブルとの違いなど詳しくはこちらの記事で紹介していますので、是非ご覧ください。
ザ・ハイライン(ニューヨーク市)
2009年に開業した廃線を利用した公園で、緑化された空間が都市の生態系を回復しています。
19世紀半ばに建設された高架鉄道で1980年代に廃線し、高架のまま放置されていました。
NY原産の360種類の草花を植え、生物多様性を促進しながら、2019年には年間800万人もの観光客が訪れ地域住民にも新たな憩いの場を提供しています。
設計はNYを拠点とする建築家のディラー&スコフィディオ+レンフロ(D&S+R)、庭のデザインはオランダのランドスケープ・デザイナーのピエト・オウドルフによるものです。
2029年に部分開通予定の銀座のKK線再生もNYのハイラインの計画を参照にしています。
バイオフィリックデザインのオフィスビル(シンガポール)
ビャルケ•インゲルス(Bjarke Ingels)が率いるBIGによる超高層ビルの計画です。
バイオリフィックは「バイオ=生命・自然」と「フィリア=愛好・趣味」という言葉から生まれた造語なんだ
高さ280mにもなるこの建築には8万本以上の植物が植えられており、敷地面積の140%に相当する8,300m²以上の緑地面積が確保されています。
かつての田舎と都市の共存というエベネザー•ハワードの田園都市の理想像が技術の進歩によって垂直方向に実現したプロジェクトという評価を得ています。
一方で、中国などでも超高層と緑地を組み合わせた建築の建設が進んでいるようですが、排水管理や湿度調整の失敗で虫が大量発生した事例もあったので高層での植生の管理の難しさも感じます。
アースハウス(スイス)
スイス人建築家ペーター•フェッチによる住宅プロジェクト。第1号の自邸から今では90軒以上同じモデルが建設されています。
傾斜や起伏のある土地を掘って住居を埋めることで断熱性を向上させ、空調設備の負担を軽減しつつ緑地化するという計画です。
土圧に耐えるためにコンクリートを建材とし、さらに高気密•高断熱を達成した構法となっています。
ウォーターフロント再生プロジェクト(アムステルダム)
造船所などの工業地帯があったNDSM Werf(北部エリア)と木材の積み出し港であったHouthaven(西部エリア)の2ヶ所がリジェネラティブな都市開発の事例として注目されています。
NDSM Werfでは工場用地という用途から汚染されてしまった土壌の浄化から計画が始まっています。
一般的にウォーターフロント開発は海や湖などの水辺地帯での不動産開発を指し、日本でも横浜都市部再生の中心であるみなとみらいが事例としてありますね。
杭とトンガリ(日本)
建築家の能作文徳さん設計の貸店舗のプロジェクトです。コンポストを用いた土中改善など土に関するリジェネラティブな活動や作品が多い能作さんですが、この作品では渋谷の間口1間半のいわゆる都市部狭小地での実践となっています。
これまでの作品でも独立基礎によって土壌と建築の距離をとりながら、床下の通風と防湿によって土と建築の共存のあり方を提案していましたが、今回は作品名にもある通り、杭が特徴的な構法となっています。
基礎にコンクリートを使わず、リサイクル可能な鋼管杭8本で木造躯体が持ち上げられる形式となっており、地面を土壌に戻し雨水や空気が土壌に浸透しやすいというこれまでの土との関係を維持しつつ、杭を介したさらに奥深い土中の改善に取り組んでいます。
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