小嶋一浩 教育の場としての建築

作家紹介

2016年に亡くなった建築家、小嶋一浩。その功績は建築業界において今なお高く評価されています。

共同主宰したCAt(シーラカンスアンドアソシエイツトウキョウ)や、横浜国立大学のY-GSA教授としての活動を通じて、小嶋氏は教育の場における建築の新しいあり方を提示しました。

ネズミ先生
ネズミ先生

特に学校建築の分野で数々の名作を生み出しているよ

この記事では、小嶋一浩さんの足跡を辿り、学校建築のみならず日本の現代建築を構築した言語を紹介していきます!

原広司との師弟関係

小嶋一浩は、建築設計事務所“シーラカンス”の設立メンバーの一人で、その後C+A(シーラカンスアンドアソシエイツ)、CAtへと変遷する中で数々の建築プロジェクトを手掛けました。彼のキャリアの出発点には、東京大学での原広司研究室での学びがありました。

当サイトによるイメージ図

当時の原研究室では、主に集落研究が行われていましたが、小嶋氏はその中でも様相という原氏の概念に影響を受けながら、さらに独自の視点を構築しました。

きつね君
きつね君

様相は時間や状況、周囲の環境、観る人の立場によって変化する見え方を指すね

ネズミ先生
ネズミ先生

同じ建築であっても、朝日が差し込む時間帯と夕暮れ時では、その見え方や雰囲気が異なるからね

集落における建築の配置や形態は、自然環境や地域性、歴史的な文脈と密接に関連しています。こうした観察を通じて、彼は建築がただの物理的な構造物ではなく、環境や時間、社会との相互作用によってダイナミックに変化する現象の一部として捉えました。

この視点が、小嶋さんの小さな矢印の群れという発想につながっています。つまり、空間そのものを固定的なものと見なさず、流動的な力の相互作用が生まれる場として設計する考え方です

当サイトによるイメージ図

建築の機能的なゾーニングや空間のアクティビティを理解するための黒と白の明確な図式や小さな矢印の群れなどの空間を捉える手法は、小嶋氏独自の建築言語として進化していきました。

スペースブロック

小嶋氏を代表する概念の一つにスペースブロックがあります。これは、空間を一つのまとまりとして3次元的に捉える表現方法です。

当サイトによるイメージ図

具体的には、壁に囲まれた空気の部分、すなわち気積をネガポジ反転させて実体化させるという発想です。この考え方は、2003年のスペースブロックハノイモデルで実践されました。

たぬき君
たぬき君

ネガポジ反転ってどういうこと?ただ空気の形を模型にするだけ?

きつね君
きつね君

空間を構成する見えない部分を設計に組み込むってことさ

このモデルは、人の流動だけでなくCFDシミュレーション(数値流体力学)を用いた通風の観点からも効果が検証され、非常に汎用性の高い設計手法として評価されています。

人の流れや風の動きといった目に見えない要素を立体的な設計プロセスに反映させることで、機能性と快適性の両立を目指しました。

L型壁とアクティビティ

小嶋一浩さんの建築において、角にアールを持つL型の耐力壁は、その周囲にアクティビティを生む装置として多用された代表的な構成の一つです。このL型壁は、空間を限定せず、そこに発生する多様なアクティビティによって生まれる濃淡を重視した設計思想に基づいています。

小嶋さんは、この現象を白の濃淡と呼び、空間に動的で柔軟な性格を持たせることを意図していました。

当サイトによるイメージ図

さらに、L型壁の周囲に配置される什器やホワイトボード、黒板といった設備の選択や配置によって、同じ構成の壁でありながら異なる空間の性格を生み出すことが可能です。この設計の柔軟性は、原広司さんの提唱する様相に見られる状況への適応性からの影響を感じさせます。

L型壁の応用範囲は広く、小学校や中学校、図書館、児童館など、学びの場を中心に多数の事例があります。この構成要素は、空間に新たな可能性を与えるとともに、小嶋さんの建築思想を象徴する重要な要素として語り継がれています。

宇土市立宇土小学校(2011)

小嶋さんのL型壁が発明されたきっかけのプロジェクトが、宇土市立宇土小学校です。この小学校では、開放的なスラブにL型壁を散逸させるだけで教室の領域を形成し、多様な学習活動が展開できるよう設計されました。

当サイトによるイメージパース

従来の片廊下型やオープンスクール型とは異なり、スペースブロックの空間構成を取り入れた設計は、子どもたちの自由な学びの場を支えています。

このプロジェクトはコンペで伊東豊雄さんが審査委員長を務めており、伊東さんは当時を振り返って同じく評価を得ていたヨコミゾマコト案に勝った要因として、L型壁の独創性を選出理由に述べています。

また、伊東さんはこの小学校を里山の集落のような建築だと述べていますが、原広司さんから得た集落からの学びが小嶋さん独自の言語で結実したように思えますね。

まとめ

小嶋一浩さんが影響を受けた原広司さんの様相の概念は、小嶋さんの小さな矢印の群れ白の濃淡という独自の建築言語へと発展し、建築を静的な構造物ではなく、時間や状況、環境との相互作用によって変化するダイナミックな現象として捉える基盤を築きました。

彼が残した学校建築を中心とした作品群や言語は、日本の現代建築の今後を語る上で重要な歴史であることは間違いありません。

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